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Channel: 壺中方丈庵
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犬の目 猫の目

 子供の頃、庭の隅っこで、あるいは学校の帰り道、雨の中、カタツムリをじっと眺めていたことはなかったろうか。雨蛙の賑やかな語らい、それとも合唱に聴き入ったことは? 蟻の長い行列をどこまでも辿っていったことは?  蝶々を追いかけて回ったことは? 犬や猫の表情や動きを眺めて飽きなかったこと…。...

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蠕動する言葉

 臓物がのたうっている。  まるで言葉のように。  言葉がもんどりうっている。  まるで腸(はらわた)のように。  口を突いて出る言葉は、吐き出す呻き。  デコボコの言葉の塊は空気を揺らす。  揺れる空気は言葉をあっさり呑み込んでしまう。  大気はネズミを丸呑みする蟒蛇(うわばみ)。  自らをも溶かしつくす胃液で言の葉を優しく嬲る。  粘液と化した葉っぱは樹液のように、海を渡る風に舞う。...

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眼窩は奥津城を恋しがる

 真っ暗闇の中、鮮烈な光の一閃。  目を射抜き、心を刺し貫いて。  原初、天に光があり、そこにいるオレを導いた。  違う! 導いたのではなく、曝けだし、引き裂いたのだ。  肉が切り裂かれる。  違う! 劫初よりの齟齬にメスが入っただけのこと。  そう、メスの煌めき!  それに隠れる場所はなく、居場所もない。  それは天のちょっとした過ち、それとも気紛れ、暇に業を煮やした悪戯。  肉のズレは心の歪み。...

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夢ループ

 口の中は、溶液状のバリウムでいっぱいだ。  乾くことを知らない粘土が喉の奥から途切れることなく湧き出てくる。  近所のガキどもが戯れるクレイソープのようでもある。  いや、このどこかパサパサした感じは紙粘土か。  早く吐き出さないと口の中が埋まってしまう。  けれど、すぐ近くには人がいる。  知っている奴だ。  恥を晒したくない。...

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秋宵一刻値千金

 月の光が、胸の奥底をも照らし出す。体一杯に光のシャワーを浴びる。青く透明な光の洪水が地上世界を満たす。決して溺れることはない。光は溢れ返ることなどないのだ、瞳の奥の湖以外では。月の光は、世界の万物の姿形を露わにしたなら、あとは深く静かに時が流れるだけである。光と時との不思議な饗宴。...

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独りきりの祝祭

 闇の道をよりによって一層、深い闇の世界へ分け入っていくような感覚があった。盛り上がるような黒い影。きっと鬱蒼と生い茂る森か林が黒い物塊となって自分に 圧し掛かろうとしているに違いない。 中古のバイクのヘッドライトは、懐中電灯じゃないかと思われるほどに頼りない。本当に照射しているのか、前に回って確かめてみたくなる。いっそのこと、懐中電...

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青い闇の道

 夢の中の道を歩いている…そんな気さえするほどにリアルな感覚がある。  踏む足に大地の厚みを覚える。  砂利と雑草と、コンクリートの破片とが奇妙に入り混じった、茫漠たる道が続いている。  道の先は見えず、振り返ることも後戻りすることも叶わない。  振り返ろうとした途端、方向感覚を失っている自分に気付かされる。  先というのは、顔がたまたま向いているがゆえに、先と思い込んでいるだけ。...

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死に損なっている何か

 今朝未明は、やや春霞がかってはいたが、三日月の月影。  月の高さは低くて、住宅街だと姿を見失いがち。  家と家の間とか、住宅街を縫う道路の延長上に位置したら月影を望める。  仕事の最中なのに、つい月影を夜空に探してしまう。  挙動不審者と誤解されそう。  丑三つ時も過ぎた頃から始める仕事なので、不景気も相俟って静かな郊外の住宅街での孤独な営為を淡々と続けるしかない。...

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ある日

 フッと気がついた。無限に毒々しく広がる暗闇の中空を一匹の無様な虫が蠢く。ヒルだという直感。目を開けた、つもりなのだが闇は退いてはくれない。もしや盲目になったのでは……胸を突く恐怖……違う、目が見えないのではない、光がないと表現した方がいい、目の一寸先を真っ黒な物体が覆っているとも思える。彼の体。彼には横たわっているように感ぜられた。起きようとする。...

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落ち葉のコンチェルト

 春には桜並木として桜の花びらを散らした木々は、四月に入り五月となると、桜吹雪など何処の国の話とばかりに葉桜となる。  淡いピンクの花びらをそれこそ初夏の風に吹き飛ばしてしまう。どことなく水浴びした犬が体を思いっきりブルブル震えさせて水滴を跳ね飛ばしてしまうような風でもある。...

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枯れ葉の道を行く

 乾いた枯れ葉はカサコソと、森の木立に何事かを囁く。 朽ち湿った葉っぱは、森の影に怯え口ごもる。 踏まれた葉っぱの下から虫けらが飛び出してくる。 甘酸っぱいリンゴの匂いとベージュ色のクリームを撒き散らしながら。 靴底に粘り付いた粘液を葉っぱで削るように拭う。 すると、さっきの虫けらの仲間が朽ち葉の下から這い出してきた。...

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飛行機雲幻想

 夕焼けを観たくて、慌てて家を飛び出した。 絶好のスポットで観るため、自転車を駆って。 のはずだったけど、折悪しく、雑用が重なる。 夕焼けの茜色が段々、薄れていくのが窓辺の様子でも分かる。 逸る気持ちと裏腹に、世事は俺を離さない。 夕焼けの赤に間に合わなかったけれど、夏の蒼穹よりもっと青い空が俺を待っていてくれた。 暮れなずむ末期の時特有の、濃い深い青色。...

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四面体の呪縛

 ある雨の日だった。 霙(みぞれ)になっても不思議じゃない、冷たい雨。 傘を持つ手が悴(かじか)む。 傘をたたく雨の音は、まるで心を穿(うが)つようだ。 いくら晩秋で雨天だとはいえ、夕暮れ時には間があるというのに、辺りは薄暗い。 知らない町を歩いている。誰かを訪ねるために。 目印となる郵便ポストを見逃してしまったのかもしれない。 このままだと、人里を離れてしまいそうだ。...

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あの頃の自分 今の自分

 あの頃の自分は何を求めていたのだろうか。眩しい陽光を追いかけていたのだろうか。まだ当時は、たっぷりと広がっていた田圃と砂利道と空き地と何があるか知れない林とが世界の全てだった。日が出ていたら日の下で近所の友達とそこら中を駆け回ったし、雨が降ったら降ったで、裸足になって水溜りをわざとバシャバシャやって、水と泥とのえも言えぬ感触を味わった。...

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国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた

 列車で夜の旅をするとき、あるいはトンネルを潜るとき、窓の外の闇と窓に映る女性の姿との幻想的な詐術の世界にさりげなく浸って遊んでみる。 現実がそこにある。赤の他人ではあるが、生身の女性が何処かの席に座っている。にほんブログ村...

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海の響きも聞こえない

 紅いビロードのような壁面が延々と続く。 紅い。紅過ぎる。 続く。続き過ぎる。 血塗られたパイル状の斜面を転がっている。 べとべとした感触がえも言われぬ快感を与えてくれる。 頬擦りしたいほどの滑らかさ。 血糊のリンクを、白いシュプールを描いて滑っていく。 削られ飛び散る深紅の氷。 美しい。美し過ぎる。 目が潰れそうなくらいだ。 それとも抉られ続けているのは、縫合されそこなった肉の海なのか。...

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3 + 3 = 6?

 花子が3足す3は幾つ?と太郎に聞いた。 二人は被災地のボランティアセンターにいる。 花子のは、質問と云うより、何か思惑のありそうな聞き方。 太郎はそんな花子の表情など頓着しない。 6に決まってるだろう。何だよ、いきなり。 例えばさ、ミカンが三つにリンゴが三つあったら? 同じだよ。6だよ6。 3 + 3 は、6 って決まってるの。今さら何だよ。...

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雪掻きの音

 なんだかもどかしいような切ないような夢で目が覚めた。 夢の内容は、目覚めた瞬間に忘れた。 真っ暗闇の中に光を見たような気がしたけれど、光の輪が閉じていくようでもあった。 尿意を覚える。 寒い。トイレに行かないと。 トイレに近い寝室から父の咳(しわぶ)きが聞こえてくる。 ベッドから身を起こす気配が感じられる。 ファンヒーターが運転延長の合図音を鳴らしている。...

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真冬の満月と霄壤の差と

 昨夜の月はほぼ天頂にあった。そして小生はまさに天底にある。首が痛くなるほどに見上げないと月を真正面に眺めることができない。それほどに高く月は照っていたのだ。天頂にあってこの自分を見上げさせている月は、小生に影さえも与えてくれない。...

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夜目遠目笠の内

 広辞苑によると、「夜見たのと、遠方から見たのと、笠をかぶっているのをのぞき見たのとは、女の容貌が実際よりも美しく見えるものである」だそうである。 恥ずかしながら、小生は「笠の内」を今の今まで、「傘のうち」と思い込んでいた。 傘というのは、敢えて説明するまでもないだろう。雨や雪などを防ぐためのものだ。日光を防ぐものでもある。その意味で、用途的には、傘も笠も同じだ。...

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